わあ、素晴らしいわ!!
この世はなんて素敵!!
なんて思ってられるかよ!!
リストカット、セックス、不倫 エトセトラエトセトラ
若者社会では最近そのことばっかりが話題。
世界が病んでる。ああ、みんな病んでる。
携帯小説だって、この中のひとつを書けば
泣ける小説として売れちゃう。
平々凡々な毎日を打破してくて
もどかしい思いをしていたわたしは
付き合いはそう長くないけど
そこそこ仲のいいトモダチに妊娠したんだと
知らされた。
「ねえ。あたし子供できたみたいなの」
「うそ。」
「ほんとう。彼と結婚して生むことにしたの。
だから進学もしないしもうすぐ学校やめると思う。」
「お、おめでとう」
「ありがとう。
これから色々タイヘンなんだ。平凡なわたしがまさか
できちゃった婚するなんて思ってなかった。」
一年前から付き合っていた会社員の彼氏。
彼女は平凡な幸せを日々噛み締めていた。
彼との出来事を逐一あたしに報告し、
あたしはいつもその話をグチも漏らさず聞いていた。
あたしにはそのような大事な人や彼氏もいなければ
不倫もしていないので怪しい関係の人もいない。
だから、彼女の気持ちがわかるかといえば
答えはノーだ。けど彼女の恋をしている様子は
とても可愛くて微笑ましいものだった。
彼女が望んでいたかはわかんない。
けど、「妊娠」という出来事で
平凡な毎日を打破したんじゃないかと思う。
もうすぐ授業が始まるっていうのに
あたしは屋上に向かった。
屋上には同じクラスの亜久津がいた。
亜久津はいつも授業とか学校をサボったりしてるけど
たまに授業を受けるときもある。
クラスには自分から馴染んでないけど彼の気ままさが
わたしは結構好きである。
まあ、不良だからってのもあるかもしれないけれど。
「亜久津」
「あ?」
「あほぼけかす」
あたしは投げやりになって彼を罵倒した。
平凡な日々を打破したいの。
けど、何もないの、あたしには。
守るものもなければ溺れるものもないのよ。
そんな胸の内を気にしないように生きていくのは
フラストレーションが溜まるでしょう。
「オマエ、殴られたいのか?」
気がつくと壁に打ち付けられていた。
胸倉をつかまれて少し苦しい。
「ねえ、幸せ?亜久津は幸せなの?
毎日が淡々と過ぎていくの。残された時間なんて
そんなにあるわけじゃない。生きるってのは限られた事なの。
平凡が幸せだというけれどこんなにも毎日は平凡なのに
あたしはちっとも幸せじゃない。
でも、あたしには何も無いの。守るものも溺れるものもない。」
彼はあたしの胸倉を放した。
突き刺さるように鋭い目はあたしを見ている。
鋭い目をしているのに少し優しさも感じて
「ああ、こいつ、色気あるんだな」と思った。
そして少しグラっときてしまった。
平凡な日々を打破するということで
あたしは彼を好きになってみることにした。
轟音と共に押し寄せる
大きな波を掻き分けて