あたしは昔からはっきりさせないと気がすまない性質である。
しかしながら、うやむやにしておいた方が自分がしんどくないのだよなあ、
と歳を重ねていくうちに思うのだ。特に人間関係は。いちいち白黒をつけていては
あたし自身精神的にナーバスになってしまう。
そして今、あたしはある一人の男に振り回されている。


、今日一緒帰らんか?」

「へ?あたし?なんで?」

「オマエと一緒に帰りたいからじゃ。」

「はあ。」

「試験前やから部活とかないし大丈夫じゃ、オマエを待たせたりはせんよ。」

「わかった。」




同じクラスの仁王雅治はもう3年連続で同じクラスなのである。
席も近くて何かの縁なのか、最近とても親しくなっていた。
だから友達や仁王君の友達には「彼女なの?」だとか「付き合ってるの?」とか
色々と質問されたりするけれども実際は付き合っていない。
それが最近、心にもやもやをもたらしている原因でもあった。
今まではそんなに話す事もなかったのに、今ではもう、会えば話に花が咲く。
これはもう、あたしのこと、好きなんじゃないかと思ってしまうわけで。
切れ長の目、銀色のサラサラした髪の毛、落ち着いたトーンの声。
そんな彼をあたしはいつの間にか好きになっていた。
でも肝心の彼の気持ちはさっぱり読めない。
はっきりさせないと気のすまない性質であるあたしはそれがとても歯痒いのである。





「仁王君。」

「帰るぜよ。」

「うん。」

「そういえばな、俺、に相談があるんじゃ。」

「何?」

「実はな、好きな子がいるんじゃ。」

心臓が口から出そうになった。
聞きたいような、聞きたくないような。
知ってしまうと元には戻れないかもしれない。
それでも気になった。仁王君の好きな人。








あたしは目の前にあるなぞなぞを解こうと自ら足を踏み込んだ。









「え?だれ?」

「教えてほしいんか?」

「教えてほしいよ、そりゃ。」

「・・・・実は、オマエの友達の百瀬なんだがー 近々告白しようと思っとるんよ。」

事実を飲み込むことに精一杯だった。
飲み込んだのにまだのどにつっかかっている。
のどがキュンと痛む。

「聞いとるんか、?」

「あ、ああ。」

「気づいてなかったんか?」

気づいているはずがない。あたしはあたしのことで精一杯。
だって、てっきりあなたはあたしのことが好きなんだと思っていたんだもの。
予想のつかないような事実はのどにつっかかっている。
ついでに頭が鈍器で殴られたようにガンガンする。

「気づかなかった、よ。へへ。知らなかった。
まさか、あたしと百瀬が仲いいから、あたしに最近絡んでたの?」

「そんなわけないじゃろ。オマエと話すようになってから、
百瀬のこと好きになったんじゃ。」

「そっか。そうなのか。あ、あー、あたし用があったから、
先に帰るよ。それじゃあ、また。」




あたしはそう言い、全力で走って自分の家に帰った。
自分の部屋に入って息が切れてドサっとベッドに倒れこんだ。
あたしは自らなぞなぞを解いてしまった。
期待していたのだ。彼の好きな人はあたしであると。
そんな淡い期待を持っていたから自ら紐解いたのである。
確信ではないにしろ自信があった。
しかしたった数分前、それは見事に打ち砕かれた。








あたしの足元にはもう何も残ってはいない。
なぞなぞは解いてしまった。
期待するような答えではなかったのだ。
















な ぞ な ぞ の



方が、


    魅力的

  だった。